23. 粋なもの

粋なもの

「粋なもの」と「おしゃれなもの」は、私の中では同質ではありません。「おしゃれなもの」は、そのものの本質とつながりが無い表面的な気がし、「粋なもの」は、それ全体を一気に解読できる位の迫力があるように思えます。

私は昔、ベレー帽に凝りました。ドイツでベレー帽を幾つも手に入れて、そのお気に入りの帽子を持ってフランスのピレネーに行った時、そのルーツのバスク地方にも寄って本物のベレー帽を知ったのですが、カリフォルニアロールを、「これぞ寿司だ」、と思い込んでいたアメリカ人が日本に来て、築地の場外の寿司屋さんで本物を食べてみて仰天するような感じでしょうか、もう一目見た瞬間に、「これこそ本物」みたいな気がしたのを覚えています。

今年は何度も南チロルに行きましたが、チロリアンハットを良く見ました。年配者ほど、男の人もよく被っています。帽子には日差し除けや雨よけの効果もあるのでしょうが、羽飾りが粋だと思いました。色々と話を聞いてみると、この羽飾りを様々な場面で交換する、例えば、冠婚葬祭の場面で付け替えたり、外食する時とか、遊びに行く時にも違う羽を付けるとか、狩猟の時にも帽子の色自体とか各種のマナーがあるようです。

私は、写真の帽子を手に入れて、地元の人たちが行く立ち飲みバーが併設されているようなレストランで、大いにウケました。それがどの位かと言うと、多分、剣道の寒稽古場に、青い目のアメリカ人が剣道着に防具を付けて竹刀を右手に息をきらせて裸足で駆けつけた、なんて時と同じくらいのどよめきが起こったと思います。

勿論、私が、地元の帽子屋さんで話を良く聞いた後で、本格的な羽飾りを付けて、事に臨んだので、私の真剣さがウケタのだと思います。彼らの伝統を重んじる姿勢を見せたことで、一気にその場の人たちが打ち解けてくれたのでした。その後は、「こっちにおいで、俺のおごりよ」みたいな、大変に楽しい時間を過ごすことができました。